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平出 哲也; 満汐 孝治*; 小林 慶規*; 大島 永康*
Chemical Physics Letters, 795, p.139507_1 - 139507_4, 2022/05
被引用回数:0 パーセンタイル:0.01(Chemistry, Physical)N,N,N-Trimethyl-N-propylammonium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide (TMPA-TFSI)中において三重項ポジトロニウム(オルトーPs)消滅寿命の温度依存性を、産業技術総合研究所に整備されている垂直型陽電子ビームを用いて150Cまで測定した。TMPA-TFSI液体試料表面から表面近傍とバルク中での測定を行うために、2keVと12keVのエネルギーで陽電子を入射した。融点よりも130C高い150Cにおいても表面の構造による違いが見られた。また、どちらの入射エネルギーでも高温ほど寿命は短くなった。同様の現象は水中においてのみ、オルトーPsと放射線分解生成物であるOHラジカルなどとの反応によって見出されていた。TMPA-TFSIにおける温度依存性においても、オルトーPsの化学反応の存在を示していると考えられた。
平出 哲也
Proceedings of 8th Asia Pacific Symposium on Radiation Chemistry (APSRC 2020) (Internet), 2 Pages, 2020/04
絶縁材料中に入射された陽電子は、そのトラック末端で自らイオン化を起こし、過剰電子とラジカルが形成する。この過剰電子と入射陽電子がポジトロニウムを形成すると、ポジトロニウム中の電子とラジカル中の不対電子がスピン相関を持つことになる。このスピン相関を利用することで、ラジカルの超微細結合定数に依存した量子ビート現象がポジトロニウムとのスピン交換反応に現れ、また、スピン相関のあるラジカルとその他のラジカルをポジトロニウムをプローブとする反応で見分けることができる。水中ではOHラジカルの挙動を、室温イオン液体中ではカチオンラジカルの状態などについて研究を行うことができる。
平出 哲也; 満汐 孝治*; 小林 慶規*; 大島 永康*
Acta Physica Polonica A, 137(2), p.109 - 112, 2020/02
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Multidisciplinary)最近、室温イオン液体中におけるポジトロニウム(Ps)バブルは通常の分子性液体中とは非常に異なる状態であることが報告されている。これらの現象は徐々に理解されつつあり、陽イオンと負イオンによる相互作用により形成されている構造が、融点よりも高い温度でも存在していることが示されている。この構造が融点近くで起こるPsバブルの振動の原因であることがわかってきた。三重項Ps(オルトーPs)のピックオフ消滅寿命から見積もられたPsバブルの大きさの温度依存性は、高い温度でもこのイオン間の相互作用による構造が残っていることを示している。オルト-Psのピックオフ消滅寿命は室温イオン液体中に存在するナノサイズの構造の研究における重要な手法となりえる。
平出 哲也
AIP Conference Proceedings 2182, p.030007_1 - 030007_5, 2019/12
被引用回数:2 パーセンタイル:84.78(Nuclear Science & Technology)室温イオン液体の利用は多くの分野で行われている。そのひとつは使用済み核燃料の再処理であり、室温イオン液体の放射線の影響に関する研究は重要である。過剰電子の反応のように速い過程を研究するためには、陽電子消滅法は重要な手法である。非常に早い時刻における反応を理解するために、陽電子消滅寿命-運動量相関(AMOC)測定を行い、ポジトロニウムが作るバブルの形成が室温イオン液体の中では非常に遅いことが分かってきた。また、室温イオン液体の融点付近において、ポジトロニウム形成直後にポジトロニウムが作るバブルに振動が見られることが明らかとなった。このことから、例えば、室温イオン液体中のポジトロニウム形成はピコ秒程度の速い反応であることが言える。このように従来の液相とは違うポジトロニウムが示すいろいろな現象について議論を行う。
平出 哲也
陽電子科学, (11), p.33 - 40, 2018/09
絶縁材料中に入射した陽電子は、そのトラックの末端で熱化し、過剰電子の一つと1ps程度の時間にポジトロニウム(Ps)を形成する。したがって、Ps形成は液体中の過剰電子の溶媒和過程のような速いプロセスを調べるためのプローブとなり得る。放射線化学では室温イオン液体(IL)を照射することで興味深い現象がみられ、またその現象はILの応用において重要なものであった。そこでILの陽電子消滅寿命(PAL)測定を行ったところ、IL中で最短寿命成分の異常に長い寿命値が見出された。これらの異常な寿命値の原因を明らかにするためにPALと陽電子消滅寿命-運動量相関(AMOC)測定を行い、最終的にPsバブルの振動を発見した。最近の研究について結果を紹介しながら解説する。
平出 哲也
Journal of Physics; Conference Series, 618(1), p.012004_1 - 012004_5, 2015/06
被引用回数:5 パーセンタイル:84.22(Physics, Applied)ポジトロニウム(陽電子と電子の結合状態)は物質中で負の仕事関数を持つため、液体中ではサブナノサイズのバブルを形成する。バブルが形成される際に、その大きさが安定するまでに、バブルの大きさの変化や振動が起こると考えられる。陽電子消滅法は、対消滅線を検出することで行われる手法であるが、その時間分解能は100-200ピコ秒程度であり、通常短時間で起こる液体中のバブル形成過程は、計測された例がない。室温イオン液体中における陽電子消滅過程では不思議な現象が多く見られてきたが、最近、これらが、バブル形成に時間を要するためであることが明らかとなってきた。そこで、バブル形成時の振動などが計測できる可能性があり、実際に、バブルサイズに依存する、三重項ポジトロニウムの消滅率の振動として捕らえることに成功した。一方、この振動の周期や減衰は、サブナノスケールにおける動的粘弾性を示しており、室温イオン液体をはじめとする液体の新しい動的特性評価法となりえることを示しており、振動が温度依存することを示すことで、動的特性が反映されていることも確認した。
平出 哲也
no journal, ,
N,N,N-trimethyl-N-propylammonium bis(trifluoro-methanesulfonyl)imide (TMPA-TFSI),N-Methyl-N-propylpiperidinium bis(trifluoromethane-sulfonyl) imide (PP13-TFSI)、および1-Ethyl-3-methylimidazolium thiocyanate (EMIM-SCN)の3つの室温イオン液体中において、ポジトロニウムバブルの振動を三重項ポジトロニウムの消滅率の振動として捕らえることに成功した。この振動は通常の分子液体中ではみられない現象である。EMIM-SCN中におけるバブルの大きさは他のTMPA-TFSI, PP13-TFSIに比べ小さいが、融点より10C高い温度におけるバブルの振動周波数はどれも同様であった。これはPsバブルの振動が融点より上でも存在できるイオンによる構造を反映し、イオンによる構造からの反発力によって起こっている可能性を示していると考えられる。
平出 哲也; 満汐 孝治*; 小林 慶規*; 大島 永康*
no journal, ,
液体中ではポジトロニウム(Ps)はバブルを形成し、高温では表面張力が小さくなることでバブルは大きくなり、その結果、o-Ps寿命は長くなる。室温イオン液体では、バブルが通常と異なり、イオンのクーロン力によって構成されている構造に依存している可能性が示されている。今回、o-Ps寿命が高温でも長くならなかったことから、新しいPsバブルの存在状態の存在がさらに明らかとなった。
平出 哲也
no journal, ,
室温イオン液体中における三重項ポジトロニウムの消滅寿命が高温では短くなることが明らかとなったが、これは従来、水中でのみ見られた現象であり、三重項ポジトロニウムと入射陽電子トラック末端で形成されたラジカルとの反応によるものである。よって、同様に、室温イオン液体中においても三重項ポジトロニウムの反応が起きていることが考えられ、スピン相関のある三重項ポジトロニウムとラジカル間の反応であれば、水中同様に、三重項ポジトロニウムのスピン交換反応に量子ビートが見られる可能性が予測された。そこで、bis(trifluoro-methanesulfonyl)imide (TMPA-TFSI)について、陽電子寿命-運動量相関(AMOC)測定を行ったところ、周期的に消滅ガンマ線のエネルギー広がりが変化する量子ビートの観測に成功した。この結果、陽電子消滅法で室温イオン液体中に形成されるラジカルの検出が可能であることを明らかにした。
平出 哲也
no journal, ,
絶縁物中ではオルト-ポジトロニウム(o-Ps)の陽電子寿命は最も長い。多くの液体とは異なり、この寿命が室温イオン液体(RTIL)中では高温ほど短い。これは同じ傾向を示す水と同様にo-Psの反応を示し、その結果、水同様にRTIL中でも量子ビートが予想され、観測された。量子ビートはスピン相関のあるラジカルとの反応の結果であり、イオン化で形成されるラジカルを検出できることが示された。